9thアルバム「Magical Mystery Tour / マジカル・ミステリー・ツアー」
1967年11月27日発売。本来はイギリス・オリジナル盤ではなく、アメリカで編集されたアルバム。にもかかわらず1987年のCD化の時に準オリジナルのような位置づけになり、2009年のリマスターの時にオリジナルの位置づけに事実上格上げされたので、それに従ってオリジナルアルバムのカテゴリーに入れる。
ビートルズ自身が企画した同名の映画のサウンドトラックの6曲(アナログ盤ではA面)に、この時期のシングル収録曲を5曲(アナログ盤ではB面)加えてアルバム化したもの。映画自体は失敗作の評価だが、使用された曲はさすがにビートルズといったところ、聴くものをわくわくさせる魔法がたっぷりと詰まった素晴らしいものになっている。映画本編のほうにその魔法がかからなかったのが残念。
サントラ部分の6曲のうち、3曲がポールの作品で、しかも3曲ともそれぞれ違う曲調。映画オープニングに使われた派手な「Magical Mystery Tour」、ポールらしい美しいメロディーの「Fool On The Hill」、懐古的なボードヴィルスタイルの「Your Mother Should Know」の3曲。それぞれ素晴らしい出来で、ポールがこの企画にかなり入れ込んでいたことがわかる。
あとの3曲のうち、ひとつは4人合作(珍しい!)のインスト「Flying」と、ジョージ作のサイケデリック調の曲「Blue Jay Way」、そしてジョン作のヘヴィーな前衛ロック「I Am The Walrus」。ポールには悪いが、やっぱりジョンの「I Am The Walrus」がこのアルバムのハイライト。すごい存在感の異形のロック。ワタクシはこの曲のおかげで”Walrus”=セイウチという単語を覚えられましたよ。
残りの、シングル曲寄せ集め5曲は、寄せ集めといえどもしかしどれも重要な作品。この時期の大ヒット曲「Hello Goodbye」に、『Sgt. Peppers』の先行シングルとして世に出た「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」、そして「All You Need Is Love(愛こそはすべて)」、と、ビートルズの歴史を語るうえで絶対に外せない楽曲ばかり。あ、「Baby You're Rich Man」はまあ、いかにもシングルのカップリングという感じです。
このように、ビートルズのメンバー自身が選曲や曲順を考えたわけではない編集盤ながら、これらの曲がアルバムに入っていないとずいぶん寂しいよな、と誰もが思う曲ばかり収録されているのでオリジナル盤につぐ地位を得ることになったのも当然。『Revolver』『Sgt. Peppers』の路線が好きなら、このアルバムも必ず気に入ること請け合います。
【ワタクシが持っている盤】
1987年版のCD(ステレオ)、2009年版のCD(ステレオ)、2009年版のCD(モノラル)、2009年版のアナログLP(ステレオ)、2009年版のアナログLP(モノラル)