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Writer's picture大 西内

森 薫『乙嫁語り』第10巻


 19世紀後半の中央アジア、主に西トルキスタンのあたりを舞台にしたお嫁さんオムニバスストーリー、とうとう10巻に到達。森薫の出世作である『エマ』は10巻で完結だったから、作者にとって最長の連載となりつつある。

 今巻は1巻からずっと出てるアミル(妻・20歳)とカルルク(夫・12歳)の年の差夫婦の物語が前半。雪原での鷹狩りのエピソードが微に入り細に入りの圧倒的な画力で描かれていて今巻の白眉だろう。今に始まったことではないが、森薫の画力のすさまじさはちょっと筆舌に尽くしがたい。民族衣装の刺繍やら、普通ならアシスタンスに任せるような背景まで丁寧に自分で書き込んでるというから恐れ入る。

 後半は民俗学者のヘンリー・スミスと道案内人のアリの一行が中心。トルキスタンにおける仇討ちの風習など興味深いエピソードがあったのち、とうとう二人は当初の目的だったアンカラに到着。そこで忘れられない人との再会が!というところで今巻はおしまい。

 カスピ海沿岸地域の覇権をめぐるイギリスとロシアの思惑なんかが絡んできて、ちょっときな臭い雰囲気もしてきてるんだけど、キャラクターみんなが幸せに暮らしていけることを願ってやまない、そんなマンガ。


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