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グレゴリウス山田『十三世紀のハローワーク』

Writer: 大 西内大 西内

 世界史も教えてる身としてはつい食指が動いてしまうタイトル。 オビの推薦文は伝説の名作シミュレーションゲーム『タクティクス・オウガ』のプロデューサー、松野泰巳となれば、買わない理由が見つからない。

 13世紀、とタイトルにはあるが、おそらく村上龍のベストセラー『13歳からのハローワーク』にあやかってるのだろう。13世紀には限定せず、中世ヨーロッパの世界に実際に存在した職業を紹介した非常にマニアックな本。なかには古代中国の「墨家」や日本の「犬神人」、南米インカ帝国の「キープカマヨック」などヨーロッパ以外からの紹介もあり、非常に楽しませてくれる内容。

 基本、ひとつの職業を見開き2ページで紹介するスタイルだが、カストラート(高い声が出るように去勢された男性)など4ページあてられているものもある。「コーヒー嗅ぎ」や「水売り」「煙突掃除夫」「紋章官」など、現在はなくなった仕事の紹介ももちろん面白いが、「パン屋」など今もある仕事でも、現代人が考えるのとは違う意味づけがあったりして興味深い。ふーん、「泣き女」って世界中にいたんだー。えっ、ヴァリヤーグってビザンツ帝国の皇帝親衛隊にもなってたの?

 そして、この本を普通のオモシロ世界史本以上のものにしてるのが、著者自身による豊富なカラーイラスト。『タクティクス・オウガ』か『ファイナル・ファンタジー・タクティクス』の攻略本か、と思ってしまうような、各職業をシミュレーションゲームのユニット風にアレンジしたイラストがあり、これが史実をまるで無視した自由すぎるものなんだけど、なんでそんなデザインにしたのか、まで全て解説してあってこれがよく考えてある。想像力って、素晴らしい力だよね。


 
 
 

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